
多くの観光客が行き交う桜山八幡宮の近くに、元気いっぱいの子供たちの声が響く。イタリア語で小さな家という意味を持つ〈lacasetta〉が営む〈多機能型事業所メイちゃんのおうち〉は、児童発達支援(療育)、放課後等デイサービス、日中一時支援、相談支援事業を行っており、開所以来利用者の姿が絶えることがない。2022年11月にオープンし、今年で3年目を迎える。スタッフは、保育士、介護福祉士、看護師など専門職で構成。障がいや特性、不安や悩みを持つ子供や保護者の方々に寄り添い、日に日に増すニーズに応えながら少しずつ事業を拡大してきた。最近では不登校の子供たちの居場所として、平日の午前中も開所。そんな中で、市内の各サービス利用前にお子さんの聞き取り、サービス利用の計画などのサポートを行う相談支援事業の問合せが増えている。「なんであの子は使えて、ウチは使えないのか」など、申請プロセスがわからず困っている人もいるのが現状なのだという。そこで昨11月には高山市内の年長さんを対象に放課後等デイサービスに関する合同説明会を開催したところ多数の参加があった。
児童発達支援管理責任者の朝山さんは「初めてのことだったので参加者は2〜3人くらいだと思っていましたが、それ以上の反響があって驚きました」と話す。これはそれだけ不安を抱えた家庭があるということで、「制度がよく理解できない」「何を基準に選べばいいか判断つかない」など、抱えている不安は三者三様だ。またお世話になるかもしれないスタッフと面と向かって言葉を交わせる機会があることは、保護者の方々にとっての安心につながる。こうやって1日1日活動を積み重ね、子供1人ひとり、保護者1人ひとり目標を設定し、支援計画を立て、日々活動に取り組んできた2年間だったという。

3年目を迎えて、少しずつ地域の理解も得られるようになってきた。不安や悩みを抱える人や障害を抱える人、その家族をサポートする事業者に対する社会の反応はまだまだウエルカムなものではないが、それでも「少しずつ周囲の理解を増やしていきたい」という言葉に覚悟がにじむ。「サポートを利用するご家族は、1つの事業所だけじゃなくて複数の事業所を通い分けています。子供たちがいろんな場所で過ごしながら、たくさんの人と接し、自立に向けていろんな経験をしてほしいですね」子供たちを長いスパンでサポートしているからこそ気づける成長もあれば、逆に気づかされる場面もある。多様性を認め、誰ひとり取り残さない社会を目指すなら、障がいや不安・悩みを抱える子供たちも社会の一員であり担い手だ。子供たちが健やかに成長できる地域を目指して、今日もこの場所に明かりが灯る。